鷹です。
30代後半でノンキャリ国家公務員(地方局)からノンキャリ国家公務員(本省)へ転職しました。
その後40代になって民間企業へ転職しました。
職場で定期的に「国家公務員には再就職等規制がある」っていう周知をされるんだけど、それって転職活動に制限があるっていうこと?
実はそうなんだ。全ての国家公務員が制限されるわけではないんだけど、30代後半の人であれば制限される可能性が高いから、きちんと理解した上で転職活動する必要があるよ。
転職活動しているなんて周りには言ってないし…
そんなの誰に相談したらいいんだろう涙
安心して。再就職等規制についてきちんと教えてあげる。
これから説明することを理解して、その範囲で転職活動をすれば大丈夫だよ!
国家公務員には「再就職等規制」といって、過去に予算や権限を背景とした押しつけ的な再就職(いわゆる天下り)のあっせん等に対する国民からの厳しい批判があったことを背景に、平成19年から再就職に関する3つの行為について規制されています。
30代後半公務員の人が、安心して転職活動に取り組めるよう、再就職等規制の中でも「求職活動規制」についてご説明します。
再就職等規制とは
再就職等規制とは、次の3つの行為に関する規制を指しており、国家公務員法第106条の2、106条の3及び106条の4に定められています。
①あっせん規制、②求職活動規制、③働きかけ規制
まずはそれぞれどういう規制なのか解説していくね。
あっせん規制(他の職員や、職員OBの情報提供や再就職依頼の規制)
現職の職員が、営利企業等に対し、他の職員・職員OBを再就職させることを目的として、①当該者の情報の提供、②再就職ポストに関する情報の提供依頼、③再就職させることの要求・依頼をすることを禁止するもの。
求職活動規制(在職中の利害関係企業等への求職活動の規制)
本省課長補佐級以上に相当する現職の職員が、利害関係企業等に対し、再就職することを目的として、①自己の情報の提供、②再就職ポストに関する情報の提供依頼、③再就職することの要求・約束をすることを禁止するもの。
働きかけ規制(職員OBによる口利きの規制)
再就職者が、離職前に在職した局等組織の職員に対して働きかけを行うこと(契約や処分に関する事務に関し、職務上の行為をする・しないように要求・依頼すること)を禁止するもの。
転職活動で気をつけるべきは「求職活動規制」!
再就職等規制で制限される3つの行為については、どれも重要ですので、国家公務員の方は全てきちんと理解しておく必要があります。
ただ今回は、国家公務員の転職活動が違法かどうかについての記事となりますので、その点に絞っていうと、気をつけるべきは「求職活動規制」となります。
求職活動規制の対象となる人・ならない人
求職活動規制の対象となる人
最初に、具体的にどういう人が求職活動規制の対象となるかについて結論を申し上げます。
求職活動規制の対象となるのは、下表に掲げる職員となります。
表:求職活動規制の対象となる職員(国家公務員倫理法第二条第二項:本省課長補佐級以上の職員)
一号 | イ | 一般職給与法 | 行政職俸給表(一) | 五級以上の職員 |
一号 | ロ | 一般職給与法 | 専門行政職俸給表 | 四級以上の職員 |
一号 | ㇵ | 一般職給与法 | 税務職俸給表 | 五級以上の職員 |
一号 | ニ | 一般職給与法 | 公安職俸給表(一) | 六級以上の職員 |
一号 | ホ | 一般職給与法 | 公安職俸給表(ニ) | 五級以上の職員 |
一号 | ヘ | 一般職給与法 | 海事職俸給表(一) | 五級以上の職員 |
一号 | ト | 一般職給与法 | 教育職俸給表(一) | 三級以上の職員 |
一号 | チ | 一般職給与法 | 教育職俸給表(ニ) | 三級の職員 |
一号 | リ | 一般職給与法 | 研究職俸給表 | 四級以上の職員 |
一号 | ヌ | 一般職給与法 | 医療職俸給表(一) | 三級以上の職員 |
一号 | ル | 一般職給与法 | 医療職俸給表(ニ) | 六級以上の職員 |
一号 | ヲ | 一般職給与法 | 医療職俸給表(三) | 六級以上の職員 |
一号 | ワ | 一般職給与法 | 福祉職俸給表 | 五級以上の職員 |
一号 | カ | 一般職給与法 | 専門スタッフ職俸給表 | 全員 |
一号 | ヨ | 一般職給与法 | 指定職俸給表 | 全員 |
二号 | – | 任期付職員法 | 第七条第一項に規定する俸給表 | 全員 |
三号 | – | 任期付研究員法 | 第六条第一項に規定する俸給表 | 全員 |
四号 | イ | 検察官俸給法 | – | 検事総長、次長検事及び検事長 |
四号 | ロ | 検察官俸給法 | – | 検事の項十六号の俸給月額以上の俸給を受ける検事 |
四号 | ㇵ | 検察官俸給法 | – | 副検事の項十一号の俸給月額以上の俸給を受ける副検事 |
五号 | – | 独立行政法人通則法第二条第四項に規定する行政執行法人の職員であって、その職務と責任が第一号に掲げる職員に相当するものとして当該行政執行法人の長が定めるもの |
上記の表は、国家公務員倫理法第二条第二項に定める「本省課長補佐級以上の職員」の一覧です。
この表に該当する職員は、求職活動規制の対象となりますので、転職活動をする際は気をつける必要があります(転職活動ができないわけではありません)。
※求職活動規制の対象となる人が気をつけるべきことについては後述します。
一方、この表に該当しない職員は、求職活動規制の対象外ですので、転職活動するに当たって特段の制約はありません。
ただし、全ての職員は、転職が決まったら「届出」の提出が必要(転職先によっては一部対象外)です。これは求職活動規制の対象外である職員も同じであることにご留意ください。
えっと、行政職俸給表(一)の五級だと…規制の対象になってる!
30代後半だと、このくらいの俸給に該当している人は多そうだね。
そうだね。ノンキャリでも30代後半であれば、該当する人は結構いると思うよ。
求職活動規制に関する法令
求職活動規制の対象となる職員が、なぜ国家公務員倫理法第二条第二項に掲げる職員(本省課長補佐級以上の職員)であるかという点について順を追って説明します。
求職活動規制は、国家公務員法第百六条の三で定められています。
この条文の二項を要約すると、「意思決定の権限を実質的に有しない職員が行う転職活動は、求職活動規制の対象外」と言っていることになります。
ではこの「意思決定の権限を実質的に有しない官職として政令で定めるもの」とは一体何でしょうか。
「意思決定の権限を実質的に有しない官職として政令で定めるもの」は、職員の退職管理に関する政令第七条に規定されています。
「意思決定の権限を実質的に有しない官職」とは「国家公務員倫理法第二条第二項各号に掲げる職員以外」であると規定されています。
ここでようやく「国家公務員倫理法第二条第二項」が出てきました。
国家公務員倫理法第二条第二項各号に掲げられる職員は「本省課長補佐級以上の職員」という扱いです。
たどり着くまでだいぶ長くなりましたが、要約すると次のとおりです。
・国家公務員には求職活動規制があるが、「意思決定の権限を実質的に有しない」職員が行う行為は規制の対象外である。
・「意思決定の権限を実質的に有しない」職員とは、「本省課長補佐級以上」の職員として国家公務員倫理法第二条第二項各号に掲げる職員以外のことを指す
求職活動規制の対象となる人が転職活動で気をつけるべきこと
ここまで、具体的にどういう人が求職活動規制の対象となるかということについて説明しました。
ここからは、求職活動規制の対象となる人が、転職活動をする際にはどういったことに気をつける必要があるかという点について解説します。
まずは、求職活動規制について振り返りましょう。
ここからはかなり細かい話になります。
しかし、求職活動規制に該当する職員が転職活動をするに当たっては、必ず理解しておかなければなりません。
ヒヤヒヤしながら転職活動するのではなく、法律の範囲内で堂々と転職活動しましょう!
規制内容を正しく理解する
まずは、求職活動規制の内容を正しく理解することが必要です。
求職活動規制の対象となる職員であっても、転職活動全てが規制されるものではありませんし、しかも規制される行為も実はそこまで厳しいものではありません。
正しく理解すれば、何も怖いことはないんだよ。
規制内容の4つのポイント
①利害関係企業等とは
そもそも規制の対象となる行為は「利害関係企業等に対し」て求職活動を行う場合についてです。
求職活動を行う先が利害関係企業等でなければ、本省課長補佐級以上の職員であっても求職活動規制の対象とはなりません。
利害関係企業等について、しっかりと理解しましょう。
国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)
(在職中の求職の規制)
国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)
第百六条の三 職員は、利害関係企業等(営利企業等のうち、職員の職務に利害関係を有するものとして政令で定めるものをいう。以下同じ。)に対し、離職後に当該利害関係企業等若しくはその子法人の地位に就くことを目的として、自己に関する情報を提供し、若しくは当該地位に関する情報の提供を依頼し、又は当該地位に就くことを要求し、若しくは約束してはならない。
「利害関係企業等」とは、「営利企業等のうち、職員の職務に利害関係を有するものとして政令で定めるもの」とされています。
では、「営利企業等」とは?
国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)
国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)
第七条 (省略)
五 営利企業等 営利企業及び営利企業以外の法人(国、国際機関、地方公共団体、特定独立行政法人及び地方独立行政法人法第二条第二項に規定する特定地方独立行政法人を除く。)
営利企業等とは、営利企業及び営利企業以外の法人とあるので、NPOなどの非営利法人も「営利企業等」に含まれることになります。紛らわしいですね。
ただし、かっこ書きにもあるとおり、国、国際機関、地方公共団体、独立行政法人及び特定地方独立行政法人は「営利企業等」には含まれません。
次に「職員の職務に利害関係を有するもの」とは?
職員の退職管理に関する政令(平成二十年政令第三百八十九号)
(利害関係企業等)
第四条 法第百六条の三第一項の営利企業等のうち、職員の職務に利害関係を有するものとして政令で定めるものは、職員が職務として携わる次の各号に掲げる事務の区分に応じ、当該各号に定めるものとする。一 許認可等(行政手続法(平成五年法律第八十八号)第二条第三号に規定する許認可等をいう。以下同じ。)をする事務 当該許認可等を受けて事業を行っている営利企業等、当該許認可等の申請をしている営利企業等及び当該許認可等の申請をしようとしていることが明らかである営利企業等
二 補助金等(補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和三十年法律第百七十九号)第二条第一項に規定する補助金等及び地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百三十二条の二の規定により都道府県が支出する補助金をいう。以下同じ。)を交付する事務 当該補助金等の交付を受けて当該交付の対象となる事務又は事業を行っている営利企業等、当該補助金等の交付の申請をしている営利企業等及び当該補助金等の交付の申請をしようとしていることが明らかである営利企業等
三 立入検査、監査又は監察(法令の規定に基づき行われるものに限る。以下「検査等」という。)をする事務 当該検査等を受けている営利企業等及び当該検査等を受けようとしていることが明らかである営利企業等(当該検査等の方針及び実施計画の作成に関する事務に携わる職員にあっては、当該検査等を受ける営利企業等)
四 不利益処分(行政手続法第二条第四号に規定する不利益処分をいう。以下同じ。)をする事務 当該不利益処分をしようとする場合における当該不利益処分の名宛人となるべき営利企業等
五 行政指導(行政手続法第二条第六号に規定する行政指導のうち、法令の規定に基づいてされるものをいう。以下同じ。)をする事務 当該行政指導により現に一定の作為又は不作為を求められている営利企業等
六 国、行政執行法人又は都道府県の締結する売買、貸借、請負その他の契約(以下単に「契約」という。)に関する事務 当該契約(電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付として内閣官房令で定めるものを受ける契約を除く。以下この号において同じ。)を締結している営利企業等(職員が締結に携わった契約及び履行に携わっている契約の総額が二千万円未満である場合における当該営利企業等を除く。)、当該契約の申込みをしている営利企業等及び当該契約の申込みをしようとしていることが明らかである営利企業等
七 検察官、検察事務官又は司法警察職員が職務として行う場合における犯罪の捜査、公訴の提起若しくは維持又は刑の執行に関する事務 当該犯罪の捜査を受けている被疑者、当該公訴の提起を受けている被告人又は当該刑の執行を受ける者である営利企業等
職員の退職管理に関する政令(平成二十年政令第三百八十九号)
職員の職務に利害関係を有するのは、職員の退職管理に関する政令第四条各号に定める事務の相手方となるものです。
例えば飲食店を経営している法人Aは、飲食店の開業前に、保健所にその飲食店の営業許可を取る必要があります。
この場合、当該保健所の職員から見て、営業許可申請を出す法人Aは利害関係を有する相手方となります。
なお、既に許可を受けて営業している場合でも利害関係の相手方となりますのでご留意ください。
★利害関係企業等の考え方についてはこちらの記事で解説しています。
②自己の情報の提供とは
自己の情報の提供とは、自分自身の氏名や職務経歴といった情報の提供を指しています。
具体的に、この情報は該当する・この情報は該当しない、といったことは決まっていませんが、規制自体が「再就職することを目的として」という前提ですので、再就職の意思がある中で、再就職に必要な情報であれば全て規制の対象となると考えておいた方がよいでしょう。
③再就職ポストに関する情報の提供依頼とは
再就職ポストに関する情報の提供とは、自分が再就職するとなった場合の具体的なポジション、待遇等の情報を提供してもらうことを指しています。
こちらも、具体的にこの情報は該当する・この情報は該当しない、といったことは決まっていませんが、再就職の意思がある中で、利害関係企業等に対して、「空きポストはあるのか、それはどんなポストか、待遇はどのくらいか…」などを聞くことは規制の対象となると考えましょう。
④再就職することの要求・約束とは
再就職することの要求・約束とは、利害関係企業等に対して、自身を採用することを求めたり約束したりすることを指しています。
採用面接を受けることも「採用することを求める」ことに該当すると考えられます。
当然ですが、内定の受諾は「再就職することの約束」に該当します。
スカウト型転職サイトへの登録には要注意
このように、規制の対象となる職員であっても、利害関係企業等に対してさえ転職活動を行わなければ、問題ありません。
ただし、ひとつだけ気をつけていただきたいのは、「スカウト型転職サイト」への登録です。
スカウト型転職サイトへの登録が要注意な理由
なぜ「スカウト型転職サイト」への登録に気をつける必要があるかと言うと、あなたがスカウト型転職サイトに登録することで、そのサイトに登録している企業に、
あなたが再就職を希望しているという情報、そして自己の情報が提供されるからです。
サイトに登録している企業に利害関係企業等が含まれていて、その利害関係企業等があなたの登録情報を閲覧したら、「利害関係企業等に、再就職することを目的として、自己の情報を提供した」ことになってしまいます。
とはいえ、スカウト型転職サイトへ登録しただけでは、企業側から、あなたの職務経歴は見えても氏名は見えないので(スカウトに返信して初めて氏名が開示される)、明確に「求職活動規制の対象になる」かどうかは正直グレーゾーンです。
「企業ブロック」すればスカウト型転職サイトの登録も問題ない!
スカウト型転職サイトへの登録はグレーゾーンだとご説明しました。
この記事を読んでいるみなさんだから、「いやいやグレーゾーンなんて嫌だよ、正々堂々とスカウト型転職サイトを利用したい!」とお考えでしょう。
大丈夫です。正々堂々とスカウト型転職サイトを利用する方法はあります。
それは、利害関係企業等をブロックすることです。
スカウト型転職サイトには、「企業ブロック設定」という機能があります。
自分の職務経歴等を見られたくない企業を登録することで、個別に自分の情報を非公開にすることができる機能です。
一般的には、自分が転職活動していることを現在の勤務先に知られないようにするために、自分の勤務先を登録することが多いようですが、どの企業を登録するかは本人の自由です。
せっかくブロック機能があるのですから、利害関係企業等を「企業ブロック」してしまえばいいのです。
そうすることで、「利害関係企業等に、再就職することを目的として、自己の情報を提供する」可能性がなくなります。
再就職等監視委員会
再就職等監視委員会は、国家公務員の再就職等に関して監視等を行う中立・公正の第三者機関です。
再就職等規制に引っかかるようなことがあると、再就職等監視委員会から調査を受けることがあります。そして規制に違反すると認定された場合、再就職した企業を退職せざるを得なくなる可能性もあります。
再就職等監視委員会のウェブサイトに「再就職等規制Q&A」が掲載されていますので、こちらも参照しながら、再就職等規制に反することなく転職活動を行ってください。
まとめ
この記事では、再就職等規制の中でも特に求職活動規制について、そしてどうやったら求職活動規制を回避して転職活動することができるのかということについて解説しました。
30代後半の公務員だと、求職活動規制の対象となる方が多いと思います。
ただし、規制の内容を正しく理解すれば、何も怖いものはありません。
規制を正しく理解して、規制の範囲内で堂々と転職活動をしましょう!
★転職活動をしてみようかなと思った方!次の記事でおススメの転職サイトと転職エージェントを紹介しています。
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