鷹です。
30代後半でノンキャリ国家公務員(地方局)からノンキャリ国家公務員(本省)へ転職し、その後40代になって民間企業へ転職しました。
転職を考えるようになる中で、たくさんの本を読みました。
たくさんの本を読んだことで、新しい視点が持てたり、少しずつ意識が変わっていったり、自分自身のマインドを変える大きなきっかけになったと思います。
そんな中で、ぜひ皆さんにも読んでいただきたいと感じた本をご紹介したいと思います。
今回は、こちらです。
【科学的な適職 4021の研究データが導き出す】(著:鈴木祐)
![]() | 科学的な適職 4021の研究データが導き出す [ 鈴木祐 ] 価格:1628円 |

この本は、私たちが抱える「仕事選び」という正解のない悩みに対して、科学的根拠のもと答えを出してくれています。
一般的には、「自分が好きなことはなんだろう」という観点で仕事を探しがちですし、世の中に出回っている転職や自分探しの本も、それに近いことが書いてあります。
でもこの本は違います。
幸福度を最大化できる「本当に」自分に合った仕事を見つけるための、「科学的」で具体的な方法論が示されています。
「言われてみれば確かに!」、「今まで気づかなかった」ということばかりで、ほんとに目からウロコでした。
私の転職活動でもこの本で得た知識は役立ちましたし、転職した今も、「確かに、この本で言ってたことのとおりだ」と感じることも多々あります。
気になった方は、ぜひ本書を手にとって読んでみてください!!
この本を読んでほしい人
この本を読んでほしい人は、
- 仕事選びで悩んでいる人
- 今すぐ転職しようとは思っていないけど、他の選択肢を考えている人
- より良い仕事を見つけたいと思っている人
- 仕事に対して漠然とした悩みを抱えている人
といった方たちです。
もちろん、それ以外の方でも「科学的」な「適職」の探し方を知りたい方であれば得られることはたくさんあります。
一方で、現状に満足している、不満がない、または不満はあるけど働くとはそういうものだと思い込んでいる人には向かないかもしれません。
この本では「視野狭窄」について触れられています。
どんな人でも視野が狭まっていては情報が入ってこない(受け入れられない)し、正しい選択はできないのです。
「この本を読んでほしい人」に当てはまる方であれば、アンテナが張っているので、必ず新しい発見があると自信を持って言い切れます!
では、本書の魅力に触れていきます。
本書の魅力①:職業選択にありがちな7つの大罪
本書では、「職業選択にありがちな7つの大罪」と言う、仕事選びの場面で誰もがハマりがちな定番のミス、「人間の幸福とは関係ない仕事の要素」について説明しています。
それは以下の7つです。
- 好きを仕事にする
- 給料の多さで選ぶ
- 業界や職種で選ぶ
- 仕事の楽しさで選ぶ
- 性格テストで選ぶ
- 直感で選ぶ
- 適性に合った仕事を求める
これらは職業選択に当たってよく見かける7つのアドバイスですが、残念ながらこれらの行動はすべて大間違い。
ここでは、特によく見かける「好きなことを仕事にする」の科学的に間違いと言える点について触れたいと思います。
好きなことだけでは不十分
「好きを仕事にする。」
紀元前5世紀には孔子が「自分の愛することを仕事にすれば、生涯で一日たりとも働かなくて済む」という言葉を残しているそうです。
しかし、好きを仕事にすればよいかといえばそうではなく、多くの職業研究によると、自分の好きなことを仕事にしようがしまいが、最終的な幸福感は変わらないそうです。
それを証明した研究について、本書には以下のとおり記載されています。
2015年、ミシガン州立大学が「好きなことを仕事にする者は本当に幸せか?」というテーマで大規模な調査を行いました。数百を超える職業から聞き取り調査を行い、仕事の考え方が個人の幸福にどう影響するかを調べたのです。
研究チームは、被験者の「仕事観」を2パターンに分類しました。・適合派:「好きなことを仕事にするのが幸せだ」と考えるタイプ。「給料が安くても満足できる仕事をしたい」と応える傾向が強い。
・成長派:「仕事は続けるうちに好きになるものだ」と考えるタイプ。「そんなに仕事は楽しくなくてもいいけど給料はほしい」と応える傾向が強い。
一見、適合派のほうが幸せになれそうに見えます。自分が情熱を持てる仕事に就ければ毎日が楽しく、金目当てに働くよりも人生の満足度は高まりそうな気がするでしょう。
ところが、結果は意外なものでした。適合派の幸福度が高いのは最初だけで、1〜5年の長いスパンで見た場合、両者の幸福度・年収・キャリアなどのレベルは成長派のほうが高かったからです。
意外な結果です。
これは、「適合派は自分が情熱を持てる職を探すのがうまいが、実際にはどんな仕事も好きになれない面がある」からです。
たしかに、どんなに好きな仕事であっても、例えば細かい経費精算が苦手であればその作業は苦痛に感じます。
「好きな仕事」を求める気持ちが強いと、その分現実の仕事に対するギャップを感じやすく、最終的な幸福度が下がるそうです。
一方で成長派は、仕事への思い入れがない分「仕事とはこんなものだ」と割り切ることができ、幸福度が下がるということはないのです。
ほかにも、
- 好きを仕事にするとスキルが伸びない
- 仕事への情熱は自分が注いただリソースの量に比例する
- 真の天職は「なんとなくやってたら楽しくなってきた」から見つかる
という研究結果が紹介されています。
どれもこれも「好きを仕事にすれば幸福になれる」という考え方とは相容れませんが、すべてデータで答えが出ているのです。
本書の魅力②:仕事の幸福度を決める7つの徳目
「仕事の幸福度を決める7つの徳目」とは、7つの大罪とは反対で「あなたの仕事人生を幸せに導くために必要な要素」であり、以下が紹介されています。
- 自由:その仕事に裁量権はあるか?
- 達成:前に進んでいる感覚は得られるか?
- 焦点:自分のモチベーションタイプに合っているか?
- 明確:なすべきことやビジョン、評価軸はハッキリしているか?
- 多様:作業の内容にバリエーションはあるか?
- 仲間:組織内に助けてくれる友人はいるか?
- 貢献:どれだけ世の中の役に立つか?
これらは、「仕事の満足度」について調べた259のメタ分析などで明らかになったもので、欧米はもちろん日本を含むアジア諸国においても重要度が変わらないことがわかっているそうです。
これらの要素を満たさない仕事は、どれだけ子供の頃から夢に見た職業だろうが、誰からも憧れられる業種だろうが、最終的には幸福度は上がらない。
逆に、これらの要素がそろった仕事であれば、どんなに世間的には評価が低い仕事でも幸せに暮らすことができるのです!
この中でも、私が特に「確かに!」と強く感じた、「自由」・「達成」・「仲間」について触れていきます。
「自由」ほど仕事の幸せを左右する要素はない
自由を縛られて喜ぶ人は少ないでしょう。
でも、それだけでなく、自由であることそのものが、人間の幸福に直結しているのです。
- 作業を実行するスケジュールを好きに設定できる
- タスクの内容を好きなように選ぶことができる
- 収入や社内ルールに好きな意見を言える
とある台湾の研究で、上記のポイントをもとに被験者が働く会社の自由度を調べたところ、結果は明らか。
職場の自由度が高くなるほど被験者の仕事への満足度は上がって離職率が下がり、ストレスが大きな作業をしている間もネガティブな感情にハマりにくい傾向があったそうです。
ちなみに「幸福になりやすい自由」の種類は男女で違う傾向があるそうです。
- 女性:仕事に取り組む場所とタイミングの自由が効くほど幸福度が上がる
- 男性:仕事の進め方と作業ペースの自由が効くほど幸福度が上がる
加えて、「自由度」は寿命すら左右します。
①タバコを吸うけれど、会社内の自由度が大きい
②タバコは吸わないが、会社内の自由度が小さい
という2つのグループを比べたところ、なんと②のグループの方が体を壊しやすく、慢性病にかかる確率も高い傾向が合ったとのことです。
つまり、仕事の自由度とは、タバコよりも健康に大きな影響を及ぼすのです。
いずれにせよ、「自由」とは「あったらいいな」のレベルの問題ではなく、仕事の幸福度を決める根本的な要素なのです。
前進している感覚
人間のモチベーションが最も高まるのは、少しでも仕事が前に進んでいるとき
つまり、「達成感」が非常に重要ということです。
この本で、面白い実験結果が紹介されていました。
被験者たちは「特定のカフェで使えるスタンプカード」を渡され、次の2つのパターンで自由にコーヒーを買うように指示されました。
①「コーヒーを10杯買えば無料で1杯をサービス」と書かれたスタンプカードを渡す。
②「コーヒーを12杯買えば無料で1杯をサービス」と書かれたスタンプカードを渡す。ただし、そのカードにはすでに2つのスタンプが押してある。要するに、どちらのパターンもコーヒーを10杯買わないと無料のサービスを受けられない点は同じであり、普通に考えればすべての被験者が同じようにカフェに通うはずですが、結果は大きく異なりました。
現実には「コーヒーを12杯で1杯サービス」のカードを渡されたグループのほうが、スタンプの貯まるスピードが速かったのです。
この現象を「前進の錯覚」と呼ぶそうです。
「すでに2つのスタンプが押してあった」おかげで、達成感の錯覚が生まれ、その感覚がモチベーションを高めたのです。
小さな達成感がとても重要なのです。
人間関係の悪化は、長時間労働や福利厚生の不足の悪影響を上回る
健康面へのダメージが大きく、劣悪な人間関係のもとで働く人ほど寿命が短くなるとの報告があるそうです。
代表的なものは次のとおりです。
- 嫌な上司の下で働く従業員は、良い上司のもとで働く従業員に比べて心臓発作や脳卒中で死ぬリスクが60%高くなる
- 嫌な同僚のせいで悪化したストレスは、たとえ会社をやめても健康的なレベルに戻るまで22ヶ月かかる
- 人間関係が悪い会社では、社員が高血圧や高コレステロール、糖尿病に悩む確率が20%増加する
衝撃的だったのは、「嫌な同僚のせいで悪化したストレスは、たとえ会社をやめても健康的なレベルに戻るまで22ヶ月かかる」ということ!
私は転職前、人間関係に非常に苦労しました。
私は公務員もテクノロジーの進化に合わせてどんどん変化していくべきだと思っており、業務においていろんな改善策を提示していました。
これは現状維持派(これまでのやり方で評価されているため、やり方を変えたくない派)の強烈な抵抗にあい、途中からはひたすら個人攻撃を受けるようになり、助けてくれる人もおらず(裏では声をかけてくれる人はいましたが)、最後は心身ともに相当やられていました…。
このままではやりたいこともやれないし、なにより心身が持たない。
そう思って気持ちを新たに転職活動に取り組み、無事、民間企業への転職を果たしたのですが、転職当初は、この頃の心の傷が大きくのしかかっていました。
「人間関係から逃げる転職だった」
「転職先でもうまくいかないかもしれない」
というマイナスな気持ちに包まれ…。
しかし、転職先では周りの人たちに恵まれ、とても自分らしく働けるようになりました。
それでも転職直後は当時のことを思い出し、気持ちが暗くなることもあったのです。
それが、この「健康的なレベルに戻るまで22ヶ月かかる」ということかと、実体験として感じています。
このように、劣悪な人間関係というのは、長時間労働による健康被害よりも圧倒的に心身に害を与えるものであり、働く上での最重要ポイントとも言えるのです。
本書の魅力③:最悪な職場に共通する8つの悪を取り除く
7つの大罪を避け、7つの徳目について意識して仕事探しをすることで、適職に出会える可能性が高まります。
ただし、いくら7つの徳目を満たす仕事を見つけられたとしても、働く環境にひとつでもマイナスの要素があれば、7つの徳目がもたらすメリットが無になりかねないのです。
そうならないために、「悪を取り除く」必要があるのです。
そして本書では、取り除くべき職場の「悪」として、以下の8つを挙げています。
- ワークライフバランスの崩壊
- 雇用が不安定
- 長時間労働
- シフトワーク
- 仕事のコントロール権がない
- ソーシャルサポートがない
- 組織内に不公平が多い
- 長時間通勤
この中でも、私が特に気になった2つ「長時間労働」と「ソーシャルサポートがない」について以下に触れます。
週41時間以上の労働で脳卒中のリスクが上がる!
長時間労働が体に悪いのはもはや常識ですね。
では、「長時間労働」ってどのくらいのことを言うのか?
日本においては、厚生労働省が「月80時間を超す残業」を「過労死ライン」と定めています。
また、労働基準法では、「1日に8時間、週に40時間を超えて労働させてはならない」と定められています。
これらの情報を分解すると、
月80時間の残業→ひと月を4週間とした場合、週20時間の残業
週に40時間を超えて労働させてはならない→残業なしで週40時間
つまり日本では、週40時間+週20時間=週60時間の労働時間を超えると過労死ラインにひっかかるとされていることになります。
では、「科学的」にはどうでしょうか。
ヨーロッパ、アメリカ、日本などから約22万人分のデータを集め、およそ8年にわたる追跡調査を行って明らかになった事実は以下のとおりです。
- 週の労働時間が40時間までなら目立った問題は出ない
- 週の労働時間が41時間〜48時間になると脳卒中が起きるリスクが10%高まる
- 週の労働時間が55時間を超すと、脳卒中リスクが33%、心疾患リスクが13%、糖尿病リスクが30%高まる
だそうです!
そしてデータの傾向は世界中で一致しており、週の労働時間が40時間を過ぎたあたりから体が壊れ始め、週55時間を超えると確実に私達の心身は崩壊に向かうのです。
私、長い間当然のようにこの基準を大幅に超える働き方をしていました…。
上記のデータだと、そもそも毎日残業なしで働いて普通、ちょっとでも残業するとあっという間に脳卒中リスクが10%も上がるということです。
転職して本当によかった…
自分の健康を捨ててまでやるべき仕事なんてありません。
それは国や自治体のために働く公務員であっても同じです。
最高のチームに必要なのは、「心理的安全性」
最近は「心理的安全性」について書かれた書籍がたくさん出ています。
かくいう私も、ピョートル・フェリクス・グジバチの「心理的安全性 最強の教科書」という本を読みみました。
「心理的安全性」とは、Googleの研究によって明らかになったものであり、自分の意見や気持ちを安心して表現できる状態のことを指します。
例えば、
- 自分の意見を言っても否定されない
- 失敗を恐れずに挑戦できる
- 質問や相談をしやすい
- 異なる意見を尊重し合える
といった感じです。
心理的安全性の重要性に比べれば、その他の要素はほとんど影響力を持たないというのです。
これは、昔から「ソーシャルサポート」と呼ばれてきたものです。
2010年、約30万人を対象に「ソーシャルサポートの有無と死亡率」を調べたメタ分析があり、良い同僚や上司に恵まれない人は、そうでないグループと比べて平均50%ほど早く死亡する傾向があったということです。
研究チームは、この悪影響を「運動不足や喫煙よりも悪影響が大きい」と指摘しているそうです。
つまり、ソーシャルサポートがない職場に居続けるぐらいなら、毎日タバコを吸い続ける方がまだマシというのです。
上記「人間関係の悪化は、長時間労働や福利厚生の不足の悪影響を上回る」でも触れましたが、働くに当たって、人間関係というのは何にも比べられないほど、私たちの幸福に大きく関わっているのです。
まとめ
以上、私が感じた本書の魅力を一部ご紹介しました。
とにかく「科学的な」根拠がたくさん散りばめられており、これまで私たちが「感覚的に」抱いていたものとは相容れない事実ばかりでした。
しかし、研究データで出ている以上、それを否定することはできません(その研究データを覆す新たな研究データが発表されるまでは…ですね)。
仕事に悩んでいる人は、自分や身の回りの人からの「感覚的な」意見やアドバイスに惑わされず、「科学的な」根拠で判断してほしいと思います。
★転職活動をしてみようかなと思った方!次の記事でおススメの転職サイトと転職エージェントを紹介しています。


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