鷹です。
30代後半でノンキャリ国家公務員(地方局)からノンキャリ国家公務員(本省)へ転職し、その後40代になって民間企業へ転職しました。
民間企業で活かせる公務員の仕事はあるの?
結論、民間企業で活かせる公務員の仕事はあります。
ただ、私は転職活動初期の頃はそれがわかりませんでした。
そもそも民間企業にどんな仕事、職種があるのか、民間企業では具体的にどんな仕事をしているのかがわからないので、公務員の仕事がどう民間企業で活かせるのかなんて当然わかりません。
なので最初の頃は、自分の経験が民間企業にどう活かせるのかを考えて整理することに一番苦労しました。
転職活動をしていく中でだんだんとそれがわかるようになってきましたが、それと同時に、公務員でのエリートコースは、必ずしも民間企業では使えないポジション、スキルだったりするということにも気が付きました。
民間企業で活かせる公務員の仕事・スキルを紹介するとともに、民間企業では重宝されない公務員の仕事も紹介します。
民間企業で活かせる公務員の仕事・スキル
民間企業で活かせる具体的な公務員の仕事・スキルをご紹介します。
【部署】情報システム部署(活かせる度:★★★)
いわゆる「情シス」です。
「情シス」と一言でいっても中身は幅広いですが、公務員でも民間企業でも、IT資産の運用・管理は必ず行っています。
例えば組織全体で使っているネットワーク運用を行っているとか、システムを管理しているとか、セキュリティ規程の運用を行っているとか。
場合によってはシステムの開発を担当している人もいるでしょう。
これらの知見は民間企業でも需要が高い貴重なスキルです。
公務員としてこれらの経験がある方は、民間企業への転職は圧倒的に有利です。
年収を落とさずに転職できる可能性が一番高い部署、スキルです。
【部署】人事担当(採用、人事企画等)(活かせる度:★★☆)
公務員の人事担当者としての経験も民間企業で活かせます。
ただし、国家公務員特有の人事制度に基づく任用や定期人事異動(一斉異動)における異動案の検討といった、民間企業では想定されない人事業務の経験はあまり活かせません。
活かせる人事業務は、採用や人事企画などです。
採用の場合は、どうやって自組織の魅力を知ってもらうか、どうやって応募につなげるか、内定辞退されないためにどういうアプローチが必要か、など採用フェーズによってさまざまな検討や取組みが必要です。
人材不足と言われている昨今、どんな工夫と取組みで採用人数を確保したかという実績と経験は民間企業でも求められています。
また、人事企画と言った人事制度を考える業務も民間企業では重要です。
同じく人材不足の世の中で、社員のエンゲージメントを高めることは企業の喫緊の課題となっています。
これらの経験は、民間企業でも重宝されます。
【部署】給与担当(支給)(活かせる度:★☆☆)
公務員の給与体系は法令で定められていますが、確定した給与(基本給、残業手当その他各種手当)を支給する際の社会保険料や所得税の計算、住民税の天引きといった手続きは官民共通です。
また、加えて労務関係についても勉強すれば、社会保険労務士の資格取得にも有利です。
民間企業だけでなく、いわゆる士業としての道が拓けます。
ただし、給与計算については民間企業ではDXが進んでおり、システムを使うことで簡単に計算できてしまいます。
単なる給与計算ではなく、社会保険関係や細かい法制度に詳しいと重宝されます。
【スキル】コミュニケーション力(活かせる度:★★★)
これはもう、どこに行っても最重要と言えるスキルです。
コミュニケーション能力に欠けるけど仕事はきっちりしている人と、コミュニケーション能力が高くて仕事は普通の人…ならどの組織も後者を選びます。
(ここで、「コミュニケーション能力が高くて仕事がイマイチな人」を選択肢に入れなかったのは、そもそも企業は「仕事ができない人」を採用しようとは思わないからです)
コミュニケーション能力が高い人は、周りの人との会話も多いため、転職してもキャッチアップが早いです。
いかに早くキャッチアップするかという点は、転職にあたってとても重要です。
一方でコミュニケーション能力が低いと、周りとの会話が少なく、その分組織になじむのにも時間がかかり、仕事そのものだけでなく暗黙知を理解するのにも相当な時間を要していしまいます。
スキル不足を補える最強の能力が、コミュニケーション能力です。
【スキル】調整力(活かせる度:★★☆)
公務員として働いていると、ほとんどの場合、自分ひとりで仕事が完結することはなく、部下・後輩へ指示する、関係部署と打ち合わせしてお互いの立場を整理する、下位組織の意見を取りまとめる…など、さまざまな「調整」を行いながら仕事をしていると思います。
このような「調整」は、形は違えど民間企業でも活かせるスキルです。
民間企業の仕事の仕方は、もちろんそれぞれの企業やポジションにより異なりますが、自分ひとりだけで完結する仕事でなければ、調整力は必ず必要です。
特にお客様を相手にするポジションであれば、日程調整から価格交渉までさまざまな調整があります。というか調整が全てだったりします。
調整力は民間企業でも活かせる重要なスキルです。
民間企業への転職では有利にならない公務員のエリートコース
公務員の組織の中では評価される人しか配置されない部署というものがあります。
そしてその部署へ配属された人は「勝ち組」「エリートコース」と言われたりもします。
ただし、その中には民間企業ではまったく使えないポジションもあります。
生涯公務員としてやり抜く意思がある人はそのポジションを目指すべきですが、民間企業へ転職したいなら、これらの部署に異動になっても喜べるものではありません。
人事担当(任用)
人事の中でも「任用」を握っているポジション。
これは民間企業ではあまり使えない経験です。
民間企業でも異動はありますが、公務員のように同日に一斉異動なんてことやりません。そうすることで各部署で仕事が滞り、お客様に迷惑をかけてしまっては事業存続が危ぶまれるからです。
もちろん民間企業でも、定期人事異動があるところもありますが、公務員のように「大人数の職員を一斉に」動かすような異動ではありません。
また、公務員の異動に当たっての事務手続きは人事院規則でかなり細かく定められています。
昇任、降任、転任の違い、発令文言、発令日の取り扱い、発令主義・到達主義etc
これらにどれだけ詳しくなっても、残念ながら民間企業では使えません。
公務員の任用は、制度化された人事の中でパズルのように人を動かしている側面があるため、任用業務ができたところで民間企業では使い物になりません。
給与担当(級別定数管理)
公務員の給与は法令等で定められており、例えば国家公務員であれば人事院規則で俸給表が定められています。
行政職の人には行政職俸給表、税務職の人には税務職俸給表などです。
例えば行政職俸給表だと一級から十級まであり、採用された当初は一級や二級。その後経験を積むことで三級、四級と昇格していきます。
そしてこの級は、一級は何人、二級は何人、と各省庁ごとに数が決まっています。
この人は優秀だから三級から四級に上げよう!と考えても、今既に四級にいる人だけで四級の数を使い切っていたら新たに誰かを四級にさせることはできません。
誰かを四級から五級に上げて四級を一枠空ければいいのですが、そのためには五級が一枠空いてないといけません。そのためには誰かを五級から六級に上げて五級を一枠空ければいいのですが、そのためには六級が一枠…の繰り返しです。
そのため各省庁の給与担当者は、各級に何人配置することができるのかを管理しつつ、できるだけ上位の級の数を確保しようと人事院へ要求を行っています。
このような業務を行っているのが給与の級別定数管理です。
民間企業では、各企業独自の給与制度で運用していますので、公務員のこのような給与制度に詳しくても民間企業では活かせません。
国会担当
国会担当は、国家公務員の中でも特にハードな業務です。
活かせるスキルと言える調整力が身につくという点ではメリットのある仕事ではありますが、国会担当そのものの経験は特に民間企業では活かせません。
民間企業はコストとベネフィットを非常に強く意識して運営しています。
コストをかけても得るべきベネフィットがあると判断して初めてコストをかけますので、ベネフィットなくしてコストかけるなんてことはありえません。
国会担当に限らず公務員はベネフィットの意識がない(=コスト意識もない)ため、(真面目に考えればわかるはずの)不必要な残業をしがちです。
しかし民間企業は残業したら残業手当を支給することとなるため、その残業が本当に必要なのか、組織に利益をもたらす業務であるかをシビアに見ています。
国会担当でいつ来るともわからない議員からの質問のために待機し、質問が来たら適時適切に関係部署へ割り振っていました!なんてアピールしても民間企業では「大変だったね」と言われて終わるのがオチです。
※上記で触れた通り、国会担当であったことではなく、そこで得た調整力はアピールできるポイントになります。
民間企業で活かせる経験やスキルがあってもアピールできなければ意味がない
民間企業で活かせる公務員の部署やスキルを紹介しましたが、仮にこれらの経験やスキルをお持ちであっても、それを民間企業でどう活かしていくのかを面接で説明できなければ意味がありません。
民間企業の人は、公務員の仕事がどういうものか知りませんし、公務員の仕事が自社の仕事にどう活かせるのかもわかりません。
なので民間企業へ転職したい人は、上記のような経験やスキルを踏まえ、応募したい企業の仕事をよく調べ、自分の経験がどう活かせるか説明できるようにしておきましょう。
まとめ:民間企業への転職を考えるなら戦略的に異動希望を出そう!
民間企業で活かせる公務員の仕事やスキルについて紹介しました。
このまま公務員として続けていく自信がない、かと言って民間企業に行って自分に何ができるのかわからないという人は、この記事を参考にして自分の経験を整理してみてください。
整理してもわからない場合は、先に転職活動始めちゃってもいいかもしれません。
実際に私は、自分に何ができるかわからないまま転職活動を始め、そのため最初は書類選考で落とされることが続きましたが、転職サイトに登録した私の職務経歴を見た企業担当者が「このポジションに興味ありませんか」と声をかけてくれたことがきっかけで、自分のできることがわかるようになりました。
転職活動で得た知識を持って「ここへ異動できたら転職に有利そうだな」と気がつく事ができる可能性もあります。
異動希望を戦略的に活用し、有利に民間企業への転職活動をしてください!
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