鷹です。
30代後半でノンキャリ国家公務員(地方局)からノンキャリ国家公務員(本省)へ転職し、その後40代になって民間企業へ転職しました。
私自身はいわゆる「文系」の公務員でした。
そして公務員の世界も文系業務が多くを占めています。
しかし、この現代において、理系、特にIT・デジタルに関する知識と経験は非常に需要が高い分野です。
このまま「文系」の世界にいては、将来、相対的に市場価値の低い人間になってしまうと危ぶみ、IT企業の技術職へ転職しました。
IT・デジタル分野でも、エンジニア寄りの業務ではなく、マネジメント寄りの業務もたくさんあります。
例えばWebディレクターやプロジェクトマネージャー、ITコンサルタントなど、もちろんデジタル・情報技術分野の知識は必要ですが、文系の人にとっては圧倒的に挑戦しやすい職種です。
「情報系×公務員」その選択に潜む落とし穴
ITやデジタル技術のスキルを持ちながら、公務員という道を選んだあなた。
「安定しているから」「親が安心するから」「社会貢献できるから」
その理由、決して間違ってはいません。
しかし、情報技術の世界は、今や一歩でも遅れれば即“陳腐化”してしまうシビアな分野。
日々進化するデジタル領域において、変化の乏しい公務員の職場で本当に価値あるスキルを維持し続けられるでしょうか?
結論から言えば、もったいないのです。
VUCA時代のIT人材に求められるのは「常に学び続ける姿勢」
VUCA(ブーカ)とは、現代社会やビジネス環境を特徴づける4つの要素である
「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」
の頭文字を取った造語です。
VUCA(ブーカ)と呼ばれる変動・不確実・複雑・曖昧なこの時代。
情報技術・デジタル領域では、AI、クラウド、Web3、ブロックチェーン、量子コンピューティングなど、目まぐるしくテクノロジーが進化しています。
そして、それに伴って求められるスキルも日々アップデートされていきます。
- 一年前に使っていたツールがもう時代遅れ
- セキュリティの常識が数ヶ月で変わる
- トレンドに乗れない開発者は「使えない人材」と見なされる
これが、今のIT業界のリアルです。
つまり、「今あるスキル」を維持するだけでは、通用しない。
あなたの情報系スキルは、学び続けてこそ“価値ある資産”となるのです。
公務員の世界でIT・デジタルスキルはブラッシュアップできるのか?
公務員の世界も、少しずつDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めようとしています。
しかし、実情としてはまだまだ「旧式のシステムにパッチを当て続ける業務」が大半。
- 昔ながらのオンプレ環境
- セキュリティ上、外部ツールやSaaSが使えない
- 開発よりも保守・運用が中心
- 年次計画が優先され、スピード感がない
- IT・デジタル技術を活かした提案に上司からの理解が得られない
つまり、情報技術者としてのスキルを研ぎ澄ますどころか、「止まる」環境なのです。
さらに、最先端技術に触れる機会も少なく、内製化も進んでいないため、「学びたい」「挑戦したい」と思っても、予算や上司の理解という壁に阻まれてしまうのが現実です。
公務員の世界でIT・デジタル業務に従事できるのか?
実は一部の官公庁では、「技術職」で採用した職員を、当たり前のように「事務職」として働かせているところがあります。
行政機関においても情報技術を活かして公務を高度化・効率化していく必要性は認識しており、そのために「デジタル区分」を新設して、採用を強化しています。
それなのに・・・
- 人事院が言うからデジタル人材を採用している
- 必要性は感じているがどんな仕事をさせればいいかわからない
- 採用後は事務職も技術職も一緒でしょ?
恐ろしいことに、このような認識を持っている官庁が、本当に存在しています。
その実態が外から見えないので、入ったあとに当たり前のように事務職業務に従事させられる(または最初は情報系部署だったが、人事異動で事務職部署に異動させられる)ということが起こり得ます。
IT・デジタルスキルをブラッシュアップできないどころか、そもそもIT・デジタル業務に従事させてもらえない可能性すらあるのです。
世の中では高待遇でも、公務員では評価されないIT・デジタルスキル
民間のIT業界では、実力があるエンジニアやデータサイエンティストは高年収・好待遇が当たり前になりつつあります。
- 20代で年収700万円以上
- ストックオプションや副業で資産形成
- スキル次第でリモートOK・フレックスタイム・裁量大
一方で、公務員の世界では…
- 年功序列
- 職務加算も限定的
- ITスキルが昇給に反映されない
- 異動によって全く関係ない部署に飛ばされることも
ともすれば「利益ではなく社会貢献である」、「国民生活を支える業務である」という言葉でやりがい搾取を受けるリスクがあるのです。
実際に私が働いていた官庁でも、「世間ではセキュリティ技術を持つ人材を何千万円という金額で採用しているらしい」という会話が出た際、「年収目的で来るなんて、なんか嫌だね。そんな人ならうちには来てほしくない」と言っている人がいました。
つまり、やりがい搾取の発想は当たり前のものとして蔓延っているのです。
理系人材、IT・デジタル人材は、公務員のままでいいのか?
情報技術は、世界を変える力を持っています。
- 人の生活を便利にする
- 災害や事故を防ぐ
- 官民の効率化を実現する
だからこそ、本来であれば「磨けば磨くほど社会に価値を提供できる」のがこの分野の強みです。
にも関わらず、その才能を活かすどころか、「環境に埋もれさせる」のが今の公務員制度の限界。
これは、あなた自身にとっても、社会にとっても——もったいないと言わざるを得ません。
最後に:自分のキャリアを選ぶのは、自分自身
「今の仕事に不満があるわけじゃない」
「でも、このままでいいのか不安になる」
そんな想いを抱えているのなら、それは立派な“キャリアの違和感”です。
スキルを活かしながら、もっと学びたい、もっと成長したい。
社会にも価値を出したいし、報酬も正当に得たい。
新しいフィールドで、自分の力を試してみたい——。
今の場所で踏みとどまるのも、新たな挑戦に一歩踏み出すのも、あなたが自身が選択したのであれば、どちらであっても正解です。
でも、後悔しない選択をするためには、「考える」ことから逃げないでください。
選ぶのは、あなた自身です。
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